がんの脳への転移と
日常生活

転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)の主な症状

転移性脳腫瘍の主な症状

転移性脳腫瘍の症状や重症度は、がんが転移した脳の場所や程度によって異なります。また、がんの脳への圧迫や情報伝達を行う神経細胞の異常興奮が起こることによって出現する症状もあります。

同じ脳の病気でも「脳卒中」は突然に症状が悪くなりますが、転移性脳腫瘍は、じわじわと悪くなることが多いので、「おかしいな」と思ったら、早めにかかりつけの医療機関に連絡しましょう。

では、転移性脳腫瘍の症状について、障害を受けた場所や圧迫、神経細胞の異常興奮による症状について説明していきます。
先ず、簡潔に説明しますので、イメージをつかみましょう。

大脳:手足の力が入りにくい 言葉がでにくい 認知障害 片方だけの視野が狭くなる けいれん発作 など/小脳:ふらつき 嘔気・嘔吐 など/がんが大きくなると・・・:頭痛 嘔吐 意識障害

※ 小脳の転移は特に治療を急ぎますので、「頭痛+嘔気+ふらつき」の症状がありましたら、担当医に早く伝えましょう。

もう少し詳しく説明をしていきます。

《症状①:脳転移が発生した場所》

脳の構造と働き(機能)に脳の部位別の働きを示しましたが、その機能が十分に働かなくなると考えればわかりやすいでしょう。

一般的に起こりやすい症状は、片麻痺(運動障害)、しびれ(感覚障害)、認知障害、言語障害、視野障害、運動失調などです。下に部位別症状の一例を示します。

大脳は左右の大脳半球に分かれていますので、左右の脳で出現する症状に違いがあったり、障害を受けた脳とは反対側の体に症状が起こったりします。

《症状②:腫瘍による圧迫―頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)》

脳は頭蓋骨などで保護されているので、その体積を増やす余裕(スペース)がありません。脳内に腫瘍ができると腫瘍だけでなく、腫瘍の周りもむくみ(脳浮腫)が生じたりするので、その分の容量が増えます。しかし脳には広がるスペースがないので、脳は圧迫されます。また、脳は髄液で浮かんでいる状態と話しましたが、この髄液は循環しています。腫瘍の圧迫によりこの循環路が障害を受けると、脳内に髄液が過剰に貯留します(水頭症:すいとうしょう)。

このように脳が圧迫されると頭蓋内圧(ずがいないあつ)が上昇して、頭痛(早朝に特に痛むことがあります)吐いてしまう(嘔吐)などの症状が出現します。頭蓋内圧が上昇して起こる症状を「頭蓋内圧亢進症状」と言います。この状態が悪化すると脳が本来のスペースから押し出されてしまう「脳ヘルニア」が起こります。この状態になると、意識障害や呼吸障害などが起こり、生命の危険性がありますので、緊急の処置が必要になります。

 

《 脳浮腫の所見 》
)ががんです。がんの周囲に脳のむくみ(脳浮腫)が確認できます(印の部分)。
浮腫は左の画像では黒く、右の画像では白く見えます

《 脳ヘルニアの所見 》
側頭葉の腫瘍により脳幹が圧排されています

《症状③:脳神経細胞の異常な興奮―てんかん》

脳の情報伝達は、神経細胞が刺激を受けて興奮することで、伝達されます。腫瘍による脳の圧迫や機能障害によって、突発的に神経細胞の異常な興奮が繰り返されることがあり、「意識の低下」や「けいれん」、「体が硬直する」などの発作を引き起こします。この病態を「てんかん発作」と言います。てんかん発作の症状は、局所だけだったり全身に及ぶものだったりしますが、脳へダメージを与えますので、発作の予防が重要です。発作予防には薬が投与されます。また、発作時にも早期に発作を停止させるように薬物療法を中心とした治療が行われます。

以上のように、転移性脳腫瘍の症状はいろいろです。
繰り返しになりますが、脳はとても重要な臓器ですので、気になる症状が続くようでしたら、早めにかかりつけの医療機関に相談しましょう。