がんの脳への転移と
日常生活

脳の構造と働き(機能)

脳の構造や働き(機能)を知ることで、脳転移(のうてんい)によって起こる症状について、より理解することができます。

【脳の構造と働き(機能)】

脳は生命維持、運動、感覚、知的活動など、人のからだの全体をコントロールしているとても重要な臓器です。そのため頭皮や頭蓋骨、髄膜(ずいまく)に包まれて保護されています。さらに、髄膜の空間は「髄液(ずいえき)」で満たされていますので、脳は髄液の中に浮かんだ状態にあります。これは、保護だけでなく、軟らかい脳組織の形状保持のためのしくみでもあります。重さは一般的に成人で1200g~1400gと言われています。また、脳は「大脳」、「小脳」、「間脳(かんのう)」、「脳幹(のうかん)」の4つの部位に大別されていて(図1参照)、部位によって役割が決まっています。

(図1) 脳の構造(イメージ図)

それぞれの部位の働きについては、下記を参照して下さい。

大脳

  • 脳の約80%を占めていて、思考、記憶、判断、感覚、運動、創造性、社会性といった人間ならではの高次の機能を担っています。
  • 左右の大脳半球で構成されています。形態は同じですが、機能には左右差があります。右の脳は体の左側からの情報を受け、主に体の左側を支配しています。左の脳は体の右側からの情報を受け、主に右側を支配しています。
  • 「前頭葉」、「後頭葉」、「側頭葉」、「頭頂葉」の4つの大脳葉に分かれています(図2参照)。

(図2)4つの大脳葉(イメージ図)

部位 主な役割
① 前頭葉(ぜんとうよう 運動、精神活動、判断、記憶、言語機能(左側)、など
② 後頭葉(こうとうよう 視覚情報の処理
③ 側頭葉(そくとうよう 記憶、聴覚情報処理、言語理解(左側)、など
④ 頭頂葉(とうちょうよう 体性感覚(温度覚、痛覚、触覚など)に関与。視覚、聴覚の統合、読み・書き・計算、など

小脳

  • 大脳の後下方に位置し(図1参照)、体の動きを調整し、スムーズな運動を可能としています。また、眼球運動の調整や身体のバランス(平衡感覚)を保つ働き、走り方や泳ぎ方など運動の学習も担っています。
  • 大脳と密に情報交換をしています。大脳から出た運動命令を調整し筋肉に指令を送ります。

間脳

  • 視床、視床下部で構成されています(下図参照)。
  • 脳幹と大脳のつなぎ役のような機能を持っています。また、体の感覚や視覚、聴覚などを大脳に伝える役割もあります。
  • 体内時計の調整を担っています。
  • 視床は、嗅覚以外の感覚情報を頭頂葉に送る、運動機能調節の補助機能などを担っています。
  • 視床下部は、体温調整、血圧、心拍、食べる・飲む、性行動、睡眠など、生体のリズムや怒りや不安などの情動行動を調整しています。また、尿量の調整、乳汁の分泌や子宮の収縮などのホルモン分泌を調整しています。

脳幹

  • 小脳の前方にあり、中脳、橋(きょう)、延髄(えんずい)からなっています(下図参照)。
  • 生命維持に不可欠である血液循環、血圧、呼吸、嚥下(飲み込み)などの機能をコントロールしています。また、意識レベル(覚醒状態)も調整しています。12対の脳神経のうち、10対の核も存在しています。
  • 大脳や小脳からの運動情報を脊髄に伝え、手足や体から入ってくる感覚の情報を視床に伝えています。