抗がん剤・放射線治療と食事のくふう
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- 第2章 症状別・生活と食事のくふう
- 症状と対策
- 飲込困難(のどや食道の炎症)
- 飲込困難(のどや食道の炎症)の解説
症状と対策
飲込困難(のどや食道の炎症)の解説
飲み込み困難はおもに、頭頸部や食道への放射線治療で起こります。照射部分に炎症が起きて痛みが生じ、唾液すら飲み込めなかったり、浮腫によって通過障害が起こることもあります。飲み込みやすいよう食事の形態をくふうしたり、あらかじめ食事以外の栄養補給方法を検討する場合があります。
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固形物、熱い物、塩分などをとると、カミソリで切られるような鋭い痛みを感じ、水分も飲めなかった。離乳食を利用したり、すべての料理をミキサーにかけて食べた。
のどの奥が痛くて食事があまりとれず、体重が1週間で1~1.5㎏減った。
放射線治療によるのどの痛みが、1年半以上たった今も残っている。
治療が終わっても軽いのどの痛みが残って、長く会話していると声がすぐ枯れる。
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放射線治療が終わる前後に症状がピークになります
頭頸部がんや食道がんでは、放射線治療と抗がん剤治療を組み合わせて行うことがあります。放射線治療の副作用は、照射部位や線量によって、また患者さんの体質や身体状況によっても異なります。
口の中、のど、食道などに放射線が照射されると細胞が傷つき、炎症が起きて、さまざまな症状が起きます。まず、治療の早い段階から乾燥感が出て、中頃から、のどの赤み、痛み、飲み込みにくさ、味覚の変化などが現れてきて粘膜炎がひどくなり、ただれや出血が起こることもあります。こうした症状は治療が終わる前後にピークになりますが、その後、徐々にやわらいできて、治療後1か月ほどで回復します。
温度や浸透圧をくふうしましょう
痛みや飲み込みにくさから、食事ばかりか水分もとれなくなることがあります。飲むものの温度を体温と同程度とし、浸透圧を血液に合わせると痛みなどが軽くなります。状況に応じて、栄養状態を維持するために栄養補助食品の利用や点滴などを行います。痛み止めを使用することもあります。水分もとれない場合は早めに相談しましょう。
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治療前から、禁煙、禁酒、口腔衛生が大事です
口やのどの粘膜炎を予防するには、まず治療前から禁酒・禁煙をすることがたいせつです。口の中のケアの習慣をつけることもたいせつです。治療によって唾液が少なくなると、唾液の自浄作用が低下し、口内炎が起きると歯みがきもおろそかになりがちなため、雑菌が増えて感染が起こりやすくなり、悪循環になってしまいます。治療が始まる前から、うがいや歯みがきをこまめにして、口の中を清潔に保っておくようにしましょう。荒れた粘膜に触れずに歯と歯ぐきがみがけるような歯ブラシ(ヘッド部分が小さく毛先がやわらかいブラシなど)や歯みがき剤(刺激が少ないもの)を選び、歯みがきは、毎食後と寝る前の1日4回行いましょう。
食事をするときは、粘膜に対する刺激を減らす食べ方を心がけましょう。それはよくかんで食べることです。よくかむと唾液の分泌が促され、食べ物が細かくなめらかになって、粘膜を傷つけにくくなります。また、治療が進むにつれて粘膜の弾力が失われてくるので、一度にゴックンと飲み込むとつかえやすく、痛みが出ます。しっかりかめば、細かくなった食べ物が少しずつ自然にスムーズに流れ込んでくれます -
ゼリー、ペースト、ムース状の食べ物がおすすめです
症状が軽いうちは、やわらかく煮た食べ物を細かく刻んであんをからめるだけでも食べやすくなります。液体が飲み込みにくくなってきたら、とろみをつけたり、ゼリー、プリン、ペースト、ムース状の食品がおすすめです。
市販のポタージュスープやスムージー、プリン状の食品を活用してもよいでしょう。スープやスムージーに、ドリンクタイプの栄養補助食品(「栄養補助食品(濃厚流動食を含む)の特徴と選び方」参照)を加えれば栄養価が高くなり、栄養補助食品がおいしくとれて一挙両得です。
また、見た目は普通の料理なのに、舌でつぶせるソフトな状態に調理した食材や料理が販売されています。介護食の宅配もあります。一口分を少しずつ、よくかんで食べましょう
食べ物がつかえないように、一口の量を少なくしてよくかんで食べましょう。また、思うように食事量がとれないときは、一度にたくさん食べようとせず、何回かに分けて食べてみましょう。
飲料水も、一度に飲むとつかえたり、誤嚥してむせたりすることがあります。少しずつこまめに補給し、誤嚥しやすい場合はとろみ調整食品(「栄養補助食品(濃厚流動食を含む)の特徴と選び方」参照)を加えてとろみをつけましょう。