抗がん剤・放射線治療と食事のくふう

症状と対策

膨満感の解説

治療中、おなかのあたりが張ったり、胃のあたりが重くなったり、ほんの2~3口食べただけでおなかがいっぱいに感じることがあります。治療によって胃腸の機能が低下するために起こるので、あまり気にせずに、食べられるときに、栄養のあるものをとりましょう。ただし、ときにはほかの重大な病変が隠れていることもあるので、症状が強いときは注意が必要です。

  • 膨満感で悩む患者さんの声

    食後、膨満感に悩まされている。

    おなかが張って苦しく、食欲も出ない。

    食後の胃の痛みやつっぱり感が続いた。食べ方が早いからといわれたが、治すのはむずかしかった。

  • 医師から「症状がひどいときは医師に相談を」

    あまり食べていないのにおなかがいっぱい!

    満腹感とは異なり、胃に食べ物がたくさん入っていないのにおなかがふくれたように感じたり、突っ張ったように感じるのが膨満感です。抗がん剤治療や放射線治療によって、胃や腸の動きが悪くなり消化も進まず、食べ物が胃や腸に停滞するために生じます。

    腸閉塞や腹水から起こることもあります

    腸閉塞や腹水が原因となって、膨満感が生じることもあります。その場合は、専門的な処置をしなければなりません。症状のひどいとき、食事と関係なくいつも症状があるときは、担当医に相談してください。

  • 看護師から「心身ともリラックスすることがたいせつ」

    活動不足や小食、食べ方も原因になります

    膨満感の原因はいろいろです。抗がん剤治療の副作用で腸の動きが抑制されて便秘になったり、治療によるだるさや倦怠感などから、横になって過ごす時間やあまり動かない時間が長くなったり、食事や水分があまりとれなくなったりすることでも起こります。また、もともと早食いの方は、食べ物といっしょに空気を吸い込みやすいため、空気が胃や腸にたまって膨満感がでることもあります。

    イライラやストレスも一因

    治療中は、治療に伴うストレス、治療の副作用症状に伴うストレスなど、緊張状態や過度のストレスが続くことがあります。ストレスで、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、胃や腸の動きが低下し、ガスがたまりやすくなることがあります。ゆったりとした気持ちで過ごすよう心がけましょう。

    適度な運動も効果的

    体調がよいときに食事前に少し体を動かしてみましょう。外へ出て散歩したり軽い体操をすることで、気分が変わったり、食欲が出たりします。適度な運動は胃腸の働きをととのえる作用もあります。ただし、無理は禁物です。外出がむずかしいときは、家の中で体を動かす程度でもかまいません。

  • 栄養士から「消化の良い食事を少しずつとりましょう」

    ガスを発生しやすい脂肪や食物繊維は控えましょう

    脂肪をとりすぎると、消化・吸収されずに腸に残ってしまい、ガスが発生することがあります。また、食物繊維の多いごぼう、芋、豆類などもガスが発生しやすく、症状を強めることがあります。

    炭水化物の多い主食を中心に消化のよい食事に

    炭水化物は体を動かすエネルギー源になります。やはりエネルギー源となる脂質と比べると、胃での停滞時間が短く、ブドウ糖に分解されてエネルギーになるプロセスも早く、即効性があります。ただ、炭水化物でも、芋や豆は、ふだんなら食物繊維もビタミンも豊富で望ましい食品ですが、膨満感のあるときは控えめに。ごはんやパン、めん類などの穀物を主役にします。

    膨満感のあるときには控えたい食品

    高脂肪メニュー

    揚げ物、うなぎのかば焼き

    ガスが発生しやすいもの

    ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、とうもろこし、玉ねぎ、豆類、栗、芋類、きのこ類、にんにく、炭酸飲料、香辛料、アルコール、カフェイン飲料、牛乳

    たんぱく質食品を活用して

    膨満感は食欲不振を招きやすく、無理をして食べると気分が悪くなることもあります。少し食べるとおなかがいっぱいになってしまう場合は、主食に消化のよいたんぱく質食品を組み合わせて、少量ずつに分けて食べましょう。