抗がん剤・放射線治療と食事のくふう
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- 第2章 症状別・生活と食事のくふう
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症状と対策
胃の不快感の解説
抗がん剤の治療中は、胸やけ、消化不良、胃の痛み、胃の重苦しさなど、さまざまな胃の不快症状に悩まされることがあります。抗がん剤によって胃の粘膜がダメージを受けて、胃の動きが悪くなったり、胃液や粘液の分泌が乱れやすくなるからです。もう一つ、胃の機能は自律神経によってコントロールされているため、ストレスの影響を受けやすいことも配慮しなければなりません。胃に負担のかからない食事と、暮らし方の知恵をくふうしましょう。
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抗がん剤の副作用なのか、胃が重苦しかった。
抗がん剤治療を受けているとき、口内炎、胃の痛み、下痢、味覚障害で悩んだ。
抗がん剤で胃のむかつき感と倦怠感があり、とてもつらかった。
胃の調子が悪く、食事が進まなかった。
なにを食べてもまずくて、食事に困った。
胸のつかえ、のどのつかえ、胃の痛みに苦しんだ。体を動かすときのめまいなどがある。
食後の胃のもたれ、痛みに悩んだ。
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口から肛門までの粘膜すべてがダメージを受けやすいのです
口から肛門までの消化管の内側表面はすべて、粘膜におおわれています。粘膜の細胞は、正常細胞の中でもとりわけ分裂・増殖して新陳代謝が盛んなだけに、抗がん剤によるダメージを大きく受けます。
胃・十二指腸は精神的ストレスに弱い臓器です
「胃の不快感」は、胃の症状だけでなく、上腹部の消化器官の変調でも出現します。胃や十二指腸は、胃酸によって潰瘍ができやすく、また、胃液や膵液や胆汁といった強力な消化液が集まる場所です。精神的なストレスによって、胃・十二指腸潰瘍が悪化したり、消化機能の不具合による腹痛、下痢、吐き気、おう吐などが起きやすくなり、それが「胃の不快感」として感じられることがあります。症状が強いときには医師に相談してください。
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よくかんで、ゆっくり食べましょう
食べ物はかめばかむほど消化がよくなります。時間をかけてゆっくり食べましょう。早いテンポの音楽をかけたり、興奮しやすいテレビ番組を見ながらの食事は、早食いを招きます。BGMはスローテンポな曲に、テレビも自然の風景を紹介する番組などを選びましょう。
腹六分目、七分目を目安に
満腹感は、胸やけや胃もたれなどを招きがちです。腹八分目より少なく、七分目、六分目くらいを目安にします。
どうしても食べすぎてしまってぐあいが悪くなる、という人は、食事を少量ずつ、朝昼夕の三食に、午前と午後の間食を加え、1日5~6回くらいに分けて食べてみましょう。食事は就寝2時間前までに
夜遅く食事をすると、睡眠中、胃の中に食べ物が停滞してしまい、翌朝、胃もたれなど胃の不快感が生じる一因になります。腹六分目、七分目ぐらいにとどめ、少なくとも、就寝2~3時間前には食事をすませてしまいましょう。
食べ物はどのくらいの時間、胃の中にあるの?
胃の中に停滞している時間が長いほど、消化が悪いということです。食べる量や調理方法によって停滞時間が異なってきますが、脂肪が多いものほど時間がかかることに注目してください(時間はあくまで目安です)。
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おやつの時間を活用して栄養を補いましょう
おやつを間食として、じょうずに利用しましょう。特に果物や乳製品は食事ではとりきれないものです。主食も足りないようなら、手軽につまめるお菓子を利用してエネルギーを補給するとよいでしょう。
安心調理法は煮る・蒸す・ゆでる
油を使わずに食材をやわらげ、水分を適度に含ませる「煮る、蒸す、ゆでる」は、消化がよく、胃への負担が少ない調理法です。特に、とろ火でじっくり時間をかけてやわらかく煮るのがいちばんです。味が濃くなると、塩味が胃の粘膜を刺激するので、うす味を心がけましょう。なお、焼き物やいため物も、油を控えて、火を通しすぎないようにふっくら、しっとり仕上げれば、胃に負担を与えません。
たんぱく質が不足しないよう良質のたんぱく質食品を
たんぱく質が不足すると、回復が遅れます。量が食べられないときこそ、良質のたんぱく質を摂取するように心がけましょう。良質のたんぱく質食品とは、人体に欠かすことのできない必須アミノ酸をバランスよく含む食品のこと。卵、脂肪の少ない肉類、魚介類、乳製品、大豆製品などです。2種類以上のたんぱく質、特に、動物性のたんぱく質と植物性のたんぱく質を組み合わせてとると、お互いに不足しているアミノ酸を補い合うことになり、効果的です。
避けたい食品をチェックしましょう
胃に負担を与えないためには、まず、負担をかけやすい、できるだけ避けたい食材やメニューを頭に入れておきましょう。それは、胃の粘膜を直接刺激したり、胃酸の分泌を促したりするものです。胃酸が出すぎると胃の表面に炎症が起きて、悪化すれば潰瘍になる心配もあります。
控えたほうがいい食品
高脂肪メニュー
揚げ物、ひき肉料理、うなぎのかば焼きなど
脂肪の多い魚や肉
まぐろの大とろ、バラ肉など
酸味が強いもの
酢の物、かんきつ類、パイナップルなど
煮てもやわらかくならないもの
ごぼう、竹の子、れんこん、いか、たこ
ヒトの消化酵素で消化されないもの
こんにゃく、海藻、きのこ
刺激物
アルコール、タバコ、炭酸飲料
カフェインの多いもの
コーヒー、濃い緑茶
胃酸の分泌を促すもの
香辛料、肉のエキス、辛味
胃にやさしい食材選びと食べ方のコツ
主食
炭水化物を主成分とする穀物は、胃への負担が最も少なく安心です。調子が悪く、あまり食べられないときは、主菜の食材と組み合わせて、少量でも栄養価の高いメニューに仕立てましょう。
ごはん
おかゆや軟飯でもよいが、卵やかに缶、鶏肉などを加えて、おじやや雑炊にするとたんぱく質もとれる。
パン
しっとりとしたパンより、よく焼けて水分が抜けたフランスパンやロールパンのほうが消化がよい。食パンはトーストにしたほうが消化がよい。フレンチトーストやパンがゆなら、たんぱく質もとれる。
めん類
やわらかい煮込みうどんが最適。冷たいそば、油脂の多い中華めん、食物繊維の多いそばは避けたい。
副菜
胃の調子が悪いときは野菜を敬遠しがちですが、たんぱく質を体内で利用するために、野菜のビタミンが欠かせません。粗繊維を調理して除くか柔らかくすれば、消化のよい食材ばかりです。
にんじん、かぼちゃ、大根、かぶ
皮と身の間に繊維が多いので、皮を厚くむいて煮物などに。
芋類
生で食べても消化する長芋、山芋が最適。里芋も消化酵素があり、じゃが芋は食物繊維が少なく、消化がよい。
果物
バナナは消化・吸収がいいので、胃腸の弱っているときに最適。りんご、桃、メロン、パパイアなどもおすすめ。
主菜
食べやすい卵と大豆製品に偏りがちですが、肉や魚はエネルギー代謝を促すビタミンB群、体液のバランスを保つミネラルの宝庫。1日にできるだけ、卵、乳製品、大豆製品をまんべんなく食べるよう心がけましょう。
魚介類
脂肪の少ない白身魚は安心だが、養殖ものや深海魚などは意外に脂肪が多いので、注意する。かに、ほたて貝柱、かきもおすすめ。
肉
赤身肉もミンチにしてシューマイやゆでギョーザ、ロールキャベツなどにすると、食べやすく消化もよい。市販のひき肉製品は、口あたりをよくするために脂肪成分を加えていることがあるので、表示に注意して選ぶ。
卵
かたゆで卵や生卵より、半熟卵が最も消化がよい。
乳製品
牛乳は乳脂肪が微小の粒子になっているので、吸収されやすく、胃壁を包んで保護してくれる。飲むだけでなく、おやつにも料理にも積極的に使いたい。チーズやクリーム類は脂肪が多いので、控えめに使うこと。ただし、状態によっては、かえって不快に感じることもあるので時期を注意する。
大豆製品
良質のたんぱく質、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれるので、積極的に活用したい。大豆そのものより、豆腐や湯葉、納豆などの加工品のほうが消化吸収がよく、おすすめ。