抗がん剤・放射線治療と食事のくふう
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症状と対策
吐き気・おう吐の解説
吐き気やおう吐は、抗がん剤につきものだと思われがちですが、かならずしもそうではありません。
抗がん剤の種類や量によって症状の有無や程度はさまざまです。
自分の体調や環境によっても違ってきます。治療イコール吐き気・おう吐と決めつけずに、自分に合う対応策を見つけましょう。
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抗がん剤の副作用の吐き気、だるさ、疲労感が強く、体力が低減した。
抗がん剤の治療中に気持ちが悪くなり、やる気もなく、いつまで続くのか悩んだ。
退院後、抗がん剤服用中、みそ汁のにおいで気分が悪くなる。
食事の量が減り、おいしさを感じなくなった。点滴や抗がん剤により吐き気や気持ち悪さが続いていることと、食欲がないこと。
吐き気で薬が飲めないことがある。入院しての抗がん剤の点滴中や点滴終了後、体力がなくなり、動けなくなった。
吐き気がひどいのに食事に対する配慮が全くなく、焼き魚がでてきてつらかった。副作用の吐き気は思い出すだけでも苦痛。
抗がん治療で、吐き気は心配ないと事前に聞いたものの、実際は吐き気がひどく、心配であったが1週間で治まり、少し安心した。
点滴中のひどい吐き気と脱力感などは回復するのに1か月くらいかかった。
放射線治療で吐き気で食事がとれなかった。
放射線治療時に吐き気があり、食欲もなく悩んだ。
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抗がん剤による症状に加え、心理的な要因も
吐き気・おう吐は抗がん剤そのもの、あるいは治療によって血液中に生じた物質が消化管の粘膜や脳を刺激して起こります。また、副作用に対する緊張や不安などの心理的な要因、不快なにおいや音、味などが引き金になることもあります。
抗がん剤投与の翌日が症状のピークです
吐き気・おう吐は、抗がん剤の種類によって、強く出やすい薬もあれば、まったく出ない薬もあります。
一般的に、症状は抗がん剤の投与開始後1~2時間から現われ、翌日に最も強くなり、多くの場合、3日目から軽くなります。
ただし、抗がん剤の組み合わせ方によって違います。また、経口投与の場合には症状の出方が異なります。
放射線による粘膜障害からも起こります
放射線療法によって、食道や胃に炎症が生じ、吐き気・おう吐が生じることがあります。また、宿酔症状(放射線治療を開始し始めた頃に起こる、だるさ、吐き気やおう吐、食欲不振などの症状で、数日間でおちつきます)で吐き気やおう吐が一時的に出ることもあります。
吐き気やおう吐をおさえる薬を使います
多くの患者さんは、抗がん剤によって強い吐き気やおう吐が起きてしまうと心配していることでしょう。確かに、以前は、ある種の抗がん剤による吐き気やおう吐は大変苦しい副作用でした。しかし、今では、吐き気やおう吐をおさえる制吐剤が格段の進歩を遂げて、どのような抗がん剤でも副作用を軽く済ませることができるようになっています。
症状が強い場合は医師や看護師に知らせて
吐き気・おう吐が何日も続いて食事がほとんどとれない、水分もとれないというときは、医師や看護師に伝えましょう。症状によっては、点滴で水分や栄養剤を補給するなどの処置が必要です。
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症状の経過、対策をメモして
吐き気・おう吐の現れ方や持続期間、程度には個人差があります。
治療から次の治療まで時間のあく抗がん剤治療の場合は、医療者に症状を正しく伝えられるよう、状況をメモしておきましょう。治療後の症状の経過、症状をやわらげるために試みたこと、効果の有無などを整理します。これらを次回の治療時に伝えて改善点を相談しましょう。これを繰り返すと、あなたの症状に合った対策が見つかりやすく、のり切りやすくなるはずです。治療前夜と当日の過ごし方
治療の前夜は充分な睡眠をとりましょう
食事は治療前は控えめにして、軽くとります。治療時には満腹でも空腹でもなく、胃の中に少し食べ物が入っているくらいが症状が出にくいといわれています。治療の2~3時間前に、ごはんやおかゆ、パンなどの穀物を中心に軽く食べておきまし ょう。服装はゆったりしたものにして、体をしめつけないようにします。
治療後は数時間、固形物を避けましょう
治療後しばらくは胃腸を刺激しないよう、飲み物くらいにします。飲み物も冷たいもの、熱いものは避けて、ぬるめのお茶などがよいでしょう。
治療後は心身を できるだけリラックスさせましょう
体を横にすることは避け、心身ともゆったりと過ごすよう心がけます。音楽を聴いたり、テレビを見るなど、気分転換できる方法を見つけておきましょう。軽い散歩もおすすめです。
程度にも出方にも個人差
吐き気・おう吐は、抗がん剤の種類によって、強く出やすい薬もあればまったく出ない薬もあります。また、放射線治療では、宿酔症状や照射する部位によって起こることがあります。
ただ、吐き気・おう吐が副作用として出る可能性がある場合も、出方や持続期間、程度は人によって異なります。
抗がん剤治療の場合は、まず自分の場合はどうなのかを把握しましょう。特に1 回目の抗がん剤の後の症状の経過、症状をやわらげるために効果のあったこと、なかったことなどを振り返り整理して、次の治療にいかしていきましょう。食事前、おう吐後にはうがいを
歯みがきをしてから、氷水やレモン水、お茶などでうがいをしておきましょう。気分がすっきりするだけでなく、口の中の雑菌が減って不快臭なども減ります。
食事はよくかんでゆっくりと
食事は、食べられるときに食べられるものをとってかまいませんが、よくかんで、少量ずつゆっくり時間をかけて食べるようにします。周囲も、できるだけリラックスして気分よく食べられるよう配慮しましょう。
食後2時間はすわって安静に
食後は衣類などでおなかをしめつけないように注意して、ゆっくりと過ごしましょう。仰向けに寝ると消化を妨げるので逆効果です。上半身を起こした姿勢でくつろぎます。
悪心・おう吐で食事が食べられない場合でも水分はこまめに補給
食事が食べられないときや吐いた後などは、スポーツ飲料などで水分やミネラルを補給しましょう。
気になるにおいを断つ
生活臭には、吐き気を誘発しやすいにおいがたくさんあります。新聞紙やゴムなどに反応する人もいます。見た目の不快感や耳ざわりな音も要注意。患者さんが不快に感じるものはできるだけ遠ざけるよう、家族みんなで協力しましょう。また、食事では、熱い料理のにおい(できたてごはんや温めたばかりのスープ・汁物など)や生臭いもので吐き気が出やすい方も多いようです。
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タイミングをみて食べましょう
調子のよいときを見はからって食べます。そのためには、どんなときに症状が起きやすいのか、自分のパターンをチェックしておく必要があります。ただ、食べだめは禁物。3食といわず、少量ずつ、5食、6食に分けてもかまいません。控えめに食べましょう。
さましてから食べましょう
冷ややっこや刺身、サラダ、冷たいおにぎりやめんなど、冷たいまま、あるいはさましてから食べるメニューを中心にします。温かい料理も、あら熱がとれて湯げがおさまってから食卓に出すようにすればだいじょうぶでしょう。
胃への負担の少ない食べ物を選びましょう
胃の中に食べ物が長くとどまっていることで吐き気をもよおすことがあります。胃の中にとどまっている時間が短く、胃への負担が少ないのは、ごはんやパン、めんなど、炭水化物の多い食品です。高脂肪食品や食物繊維の多いものは控えるようにしましょう。
控えたい食品&料理
食物繊維の多い食べ物
水溶性食物繊維でも、ぬめりのある海藻や山芋は胃にあまり負担を与えません。不溶性食物繊維の多い野菜や根菜、豆の皮は控えめにします。
香りの強い野菜
好みによる個人差が大きく、年配者では欧米産のハーブが苦手な人が多いようです。
脂肪の多い食べ物
加熱されたり、空気に触れて酸化された脂肪はできるだけ避けます。バターや生クリーム、ヨーグルト、マヨネーズなどの乳化脂肪は消化がよいので、適量ならだいじょうぶです。
においの立つ料理
吐き気を誘発しやすいのは、炊きたてごはん、魚料理、煮物など。具材が多い煮物はいろいろなにおいが混じって不快に感じやすく、うすい味つけは、濃い味つけよりにおいを感じやすいようです。
吐き気
吐き気があるときは無理をして食べる必要はありません。
といっても、何日もそんな状態が続くと体力が消耗して、 肝心のがんと闘う力が低下する心配もあります。
少しでも早い時期から食べられるようにするくふうを紹介しましょう。好きなときに、少しずつ食べられるものを用意しましょう
食べられそうなときに、さっと口にできるような食べ物を手近に用意しましょう。手でつまめて、少しずつ気軽に食べられる一口おにぎりやサンドイッチがおすすめです。ごはんは冷凍もできるので、一口大ににぎったり、焼きおにぎりにして気分のよいときに作りおくと重宝です。
少量盛りにして、食べた満足感と安心感を味わって
吐き気があるときは、皿に山盛りの料理を見ただけで、吐きそうになることがあります。普通の1人前でもたくさんだと感じるので、いつもより小さめの器に控えめに盛りましょう。少なくても「食べられた」という達成感と安心感の効果は大きいものがあります。
手軽にとれるシリアルや果物はいかが
症状があるときのおすすめ食品は、においが気にならず、手軽にとれるパンやシリアルです。特にシリアルは、かさが少ないわりに栄養価が高く、ビタミン・ミネラルを豊富に含んでいる製品もあります。保存がきき、牛乳やヨーグルトを添えて即食べられる手軽さも魅力。これに果物でビタミンCを補えば、栄養的には充分です。
おう吐
おう吐したときは消化器の粘膜が過敏になっているので、1~2時間は食事を控えましょう。大量におう吐した場合は水分やカリウム、ナトリウムなどの電解質を補う必要があります。
おう吐後は水分と電解質を補給して
大量のおう吐によって、水分や電解質が失われると、脱水症状を起こすことがあるので、こまめに補給します。電解質を含むミネラル飲料やスポーツ飲料、栄養バランス飲料が手軽ですが、果汁やみそ汁、スープなどでもよいでしょう。
注)一部のEGFR(上皮成長因子受容体)阻害薬や降圧剤などの服用中はグレープフルーツはジュースでも避けましょう。
食べ始めは流動食から
おう吐がおさまって最初に口にするのは、やはり流動食がおすすめです。ただ、温かく、においの立つものはまた吐き気をもよおしやすいので、ヨーグルトや冷たいポタージュなどがよいでしょう。患者さんの声も参考にいろいろ試してみましょう。
おう吐したときの処置方法は…
頭を高くして右側を下に横向きになり、えびのように背中を丸めて安静にする
冷たい水でうがいをして、氷やキャンディーなどを口に含む。
できれば窓をあけて風を入れ、室内の換気をよくする。ただし、花や調理の患者さんのにおいなどに注意する。
ゆっくりと腹式呼吸をして、好きな音楽を聴いたり、テレビなどを見て、リラックスを心がける。