抗がん剤治療と口腔粘膜炎
・口腔乾燥

はじめに

がんの治療には、手術、抗がん剤、放射線などのさまざまな方法があり、その時の病気の状態(病期)や患者さんの置かれている状況にあわせて、適切に選択されて実施しています。そして、もう一つ重要な治療に、がんやがん治療によって生じたつらい症状の軽減や療養生活の質の維持向上を目的とした緩和治療・支持療法があります。
がん治療中のつらい症状には、口の中やその周囲にあらわれる症状も多く、特に口内炎(口腔粘膜炎)や口腔乾燥は患者さんががん治療中に感じるもっともつらい症状の中の一つと言われています。

抗がん剤治療を行うと、がん細胞を死滅させる治療効果と同時に、他の正常な細胞にも影響して副作用が生じます。抗がん剤の多くは全身を巡る血液の中からがん細胞に運ばれるため、がん細胞以外の身体中の細胞にも影響を与え、特に髪の毛を作る毛母細胞や腸の粘膜にある消化管上皮細胞などの新陳代謝の活発な細胞にダメージを与えることが有名です。口の周囲では、口の粘膜に起こる口腔粘膜炎や、唾液を作る細胞がダメージを受けることによる口腔乾燥などが起こります。 口腔粘膜炎による強い痛みは、口から水分や食事をとることを難しくさせ、体力を落とす原因になります。また口腔乾燥も、味や食感などに影響して食事の楽しみを低下させ、食欲がなくなる原因になります。食事をとることができなくなると入院加療が必要となったり、また、栄養状態の低下がその他の全身トラブルや副作用悪化の原因となったりして、予定通りに必要ながん治療が継続できなくなる場合もあります。

私たちは、口の中のトラブルががん治療を進めることに与える影響を最小限にするために歯科支持療法を行っています。現在、どんなに口の中をケアしても副作用をゼロにすることはできません。しかし、口の中をケアすることによりトラブルの症状が軽減し、患者さんやその家族の療養生活が維持向上することやがん治療を予定通りに続ける手助けになると確信しています。

このコンテンツは、抗がん剤治療を行う際に起こる口腔内トラブルのうち、口腔粘膜炎と口腔乾燥に重点を置き、その「つらさ」を和らげるためにできること、療養生活を送る上で覚えておいてもらいたいことをまとめました。抗がん剤治療を受けられる患者さんやご家族の皆様に、少しでもお役に立つ手引書となれば幸いです。

このコンテンツは、静岡県立静岡がんセンター発行の冊子「抗がん剤治療と口腔粘膜炎・口腔乾燥(2024年5月第3版4刷発行)」を基に制作したものです。

監修:静岡県立静岡がんセンター

名誉総長 山口 建

制作:静岡県立静岡がんセンター

歯科口腔外科部長 百合草 健圭志
歯科口腔外科歯科衛生士 河島 美帆
歯科口腔外科歯科衛生士 安藤 千賀子
薬剤師 鴨志田 武
管理栄養士 山下 亜依子
がん化学療法看護認定看護師/
看護部副看護部長
中島 和子
疾病管理センター 看護師(参事) 廣瀬 弥生
疾病管理センター 阿多 詩子

協力:サンスター静岡研究所

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