抗がん剤治療と口腔粘膜炎
・口腔乾燥

対症療法とケア
継続することが大切です

口の中を清潔に保つ…症状に合わせた方法を選択します

口腔粘膜炎により口の中に痛みがある時期も、口の中をきれいにしておくことが大切です。歯みがきはできる範囲で丁寧に行い、うがいをこまめにするようにしましょう。口腔粘膜炎がある際の歯みがき時に、口の中の粘膜に擦れて痛みが出ると、歯みがきを続けることができません。ここでは、できるだけ粘膜への刺激が少なく、痛くない歯みがき方法や刺激が少ないうがいの方法について説明します。

基本的な歯みがき方法

  • 歯ブラシは鉛筆を持つように軽く持ちましょう。
  • 歯ブラシは、右のイラストのように歯と歯ぐきに対して、90度もしくは45度の当て方で、左右に細かく動かしながら(10~20回程度)、磨きます。この時、力を入れ過ぎないようにします。
  • 歯の表(ほほ側)、裏(舌側)、上(かみ合わせの部分)、歯と歯の間を自分のやりやすい順番(右上⇒左上⇒左下⇒右下、など)で、全部の歯をくまなく磨くようにします。

刺激が少ない清掃用具

  • 歯ブラシは、ナイロン製でやわらかめのもの、ブラシの部分(ヘッド)が小さいもの、毛先が平らにカットされているものを選びましょう。
  • 歯みがき剤は研磨剤、発泡剤、清涼剤などが入っていないなど、刺激の少ないものを選びましょう。
    歯みがき剤がしみる場合は低刺激の歯みがき剤に変えるか、歯みがき剤を使わずに水だけで磨いてもよいでしょう。
  • 洗口液を使う場合は、アルコール成分が入っていないものを選びましょう(アルコールは粘膜への刺激が強く、痛みの原因になります)。

刺激が少ないうがい方法

  • しみることがないなら、うがいは普通の水道水でよいでしょう。
  • しみる場合は、濃度を調整した食塩水(*)を使うか、医師が処方するうがい薬を使いましょう。
  • うがいの回数は少なくても1日3回以上行いましょう。できれば1日8~10回くらい(約2時間おきくらいの間隔で)行うとよりよいでしょう。
  • 口の中をケアする場合のうがいは、のどを洗う「ガラガラうがい」ではなく、口の中のみで行う「クチュクチュうがい」にしましょう。

(*)濃度を調整した食塩水
「生理食塩水」と呼ばれ、口腔粘膜炎のある口の中でも痛みなくうがいができるように、体の中の水分(体液)とほぼ同じ濃度にしたものです。自宅でも簡単に作ることができます。作り方は以下をご覧ください。

  • 洗口液を使う場合は、アルコール成分が入っていないものを選びましょう(アルコールは粘膜への刺激が強く、痛みの原因になります)。
  • 殺菌成分が入ったうがい液にはピリピリと粘膜に刺激の強いものが多いため、口腔粘膜炎・口腔乾燥があってしみる場合は使用を控えるようにしましょう。

生理食塩水の作り方

用意するもの・・・・500mL のペットボトル1本、食塩4.5g(小さじ1杯弱)、水500mL 程度

1. ペットボトルをきれいに水洗いします

2. 食塩4.5g(小さじ1杯弱)と水を容器の9割位(約500mL)まで入れます

3. ふたをして、塩が溶けるまでよく振ります

4. 完成です
コップに小分けしてうがいします

*生理食塩水は冷蔵庫で保管し、一日で使い切りましょう。

吐き気などで食事ができない時の口の中のケア

薬物療法中には、「吐き気」や「おう吐」で食事ができなかったり、体調がすぐれなかったりする時もあることでしょう。口の中を清潔に保つことの必要性はわかっていても、身体がつらい時にはなかなか実施するのが難しいです。そのような時は以下のような方法も試してみましょう。

  • 歯みがきは食後にこだわらず、吐き気が少ない時間帯に行いましょう。
  • 糖分が多い飲料を摂取した後は、原則として歯みがきをしましょう。できない場合はうがい、または最後に水やお茶など糖分が入っていない飲み物をとるようにしてください。
  • トイレ後など、体を動かした時に、一緒に口をゆすぐようにしましょう(こまめなうがいの試み)。

吐き気やおう吐があった状態で、口腔ケアを正しくできた例とできなかった例

吐き気やおう吐で食事ができず、水分補給を行っていた患者さんの口腔写真です。

口腔ケアができなかった例

糖分が多い飲料を主に摂取し、うがいや歯みがきができていませんでした。

口腔ケアが行えた例

こまめにうがいを行い、吐き気の少ない時に歯磨きを行いました。